私的神ゲーとの邂逅 | Easy Delivery Co.

皆さんは「Steamゾンビ」をご存知だろうか。
手にとれるゲームを遊び尽くし、存在するかも分からないさらなる神ゲーを求めて
Steamのストアページを延々と徘徊するゲーマーの成れの果てである。Steamゾンビにとっての唯一の解毒剤は神ゲーただ一つであり、それを消化しきればまたストアページという果てのない地を、神ゲーという地平を目指して歩き始める。『Clair Obscur: Expedition 33』という解毒剤の効き目が薄くなり、自意識朦朧と徘徊する私に与えられた新たなワクチンが『Easy Delivery Co.』だ。
まずは公式トレーラーをご覧いただきたい。
薄暗い雪の積もった峠道を、軽快な音楽とともに軽トラが爆走している。積荷が飛び散ろうがお構い無しである。「駐車場?知らんな」と言わんばかりに車を乱雑に停め、建物内に人(ネコ)がいるのに外に宅配物を置き配し、タイヤを購入・換装する......といった具合だ。
このように、Easy Delivery Co.は配達ゲーだ。本質はデスストランディングに近いかもしれない。だが実際にプレイすると、慌ただしく配達するトレーラーとは少し異なった印象を得た。
舞台となる山間の町は静謐そのものだ。-20℃にもなる屋外には人っ子(動物っ子)ひとり(いっぴき)歩いていやしない。他の車だって走っていない。トレーラーのBGMはゲーム中に常に流れるものではなく、車のラジオから流れる音楽のひとつだ。アップテンポなBGMは少なく、いわゆるLo-Fiでチルい音楽が主だ。
ゲームシステム的にも、配達を急かされることはない。あるのは自分の体力回復、体温管理などの少しのリソース管理だ。ノルマも当然ない。配達で稼いだお金で少し便利にしながら、住民たちと少しずつ触れ合う。ふと運転中に南を見れば巨大な陸橋に列車が走っている。
配達ゲーだがナビゲーションはほとんどない。地図に何となくの位置が示されるだけ。 もちろんコンパス表示もされない。方向音痴にはかなり辛いが、分かれ道には行き先の看板が立っているので、舗装された道を走ればよほどのことでは迷子にならない。良い意味で不便だ。グラフィックも相まってPS1時代を思い出す。
資本主義の枠組みから離脱したいという気持ちがある。社会的な営みをすることに少し疲れてしまったみたいだ。しかし、その恩恵を享受しておきながら一方的にイチ抜けしたいというのはいささか虫が良すぎる話だ。このゲームをしている間だけは何かに追い立てられることもなく、静かな時間を過ごすことができる。脳の報酬系を刺激してくれるゲームも楽しいが、本当に求めるべきはこういった願いを実現できるゲームなのかもしれない。まさに私的神ゲーだ。
このゲームのような、雪国特有の侘しさを携えたコンテンツが好きだ。例えばGhostpiaや、The Long Darkのような。 これらについてもいずれ紹介できたらと思う。
